10年目を迎えたLiga Agresiva、大阪の指導者に聞いた

広尾晃のBaseball Diversity

高校野球のリーグ戦、Liga Agresivaは2015年に大阪府で始まったが、今では34都道府県、191校が参加する大きなリーグ戦になっている。

特別のルールがあるリーグ戦

Liga Agresivaは、ただリーグ戦で試合をするだけではない。

・原則として選手は全員試合に出場する

・球数制限を実施する

・スポーツマンシップについて学ぶ機会を設ける

など、ユニークな取り決めを行っている。

昨年までは、アメリカの規格の低反発バット「BBCOR」のバットを使用していたが、今回からは、日本高野連の新規格に準拠した金属バット、あるいは木製バットを使用することになっている。

今年も新しいルールを導入

「大阪府のリーグ戦(Liga 大阪)では今年は13校が参加しています。昨年より3校増えました。以前には、Aリーグ、Bリーグと実力差で2つのリーグに分けていましたが、今年はそれほど実力差がないので、2つのリーグには分けましたが、それぞれから勝ち抜いた学校で決勝トーナメントを行います。またMLBのように両リーグの“交流戦”もおこないます」

このリーグ戦を、幹事として企画、運営してきた門真なみはや高校の藤本祐貴監督は話す。

門真なみはや高校の藤本祐貴監督

リーグ戦の試合は各試合7回制とする。これまでやってきた経験から、9回制より7回制の方が接戦が多くなっていた。そこでリーグ戦は好ゲームが多くなるように7回制とし、決勝トーナメントは9回制とすることにした。

日本高野連は、今年になって「7回制」の導入を検討し始めたが、Liga大阪は昨年のリーグ戦が終了した時点でこれを決めていた。

さらに、Liga大阪では、以前からタイブレーク制のように走者を置いたシチュエーションでの試合を行ってきたが、今季はその仕組みも少し変えた。

「今年は3回と5回は、1アウト一三塁から、7回はノーアウト二塁から試合を開始します。一三塁は、最も点が入りやすいシチュエーションだと言われています。この状況からスタートして、攻める側はどうすれば得点に結びつけられるかを考え、守る側は失点を防ぐための方策を考えます。そういう形で“考える野球”を目指すんですね」

今年からバットの規格が変わったが、打撃面での変化はあったのか?

「昨年まで使っていたBBCORのバットに比べて、今年のバットの方が打球が飛んでいるように思います。でも、チームの方向性はそれほど変わっていません」

藤本監督は、チームの作戦について、なるべく選手が自主的に判断して作戦を立てるように指導している。

監督自身は、プレーの後で「あのときのリードはあれでよかったのか」「投手をしっかり観察してから動いたのか」など、選手に考えさせるためのアドバイスを与えている。

すでにLiga大阪では、こういう指導法は一般的になっているのだ。

布施高校対門真なみはや高校の対戦

できるだけサインは出さない 布施高校

布施高校の山下健治監督

大阪府立布施高校はLiga大阪に参加して今年で4年目だ。山下健治監督は

「今年はできるだけサイン出さないでおこうと思っています。試合の中で生徒が自分で考えてスタートを切ったりするようにしようかな、と思っています。僕はここは絶対という場面に最低限のサインは出しますが、基本的には生徒自身が考えて動くようにしようと思います。Liga大阪は、ワンアウト一三塁からとか状況設定があるので、そういうのもやりやすいかなと思います。選手の主体性を大事にしたいですね」

そういう方針に切り替えて変化があったのか?

「生徒との会話がやはり増えましたね。ランナーに出るときに“スタート切るよ”とか“このタイミングならいけるんじゃないか”みたいなことを生徒同士が話すようになりました。これまでなら僕の方を観ていたところですが、サインが出ない分、自分が判断しないといけないから、材料を探すようになったんですね」

今春からの新規格の金属バットを振り抜く

金属バットの違いは感じるか?

「BBCORの方が飛ばなかった気もしますが、それでも以前のバットより飛ばないとは思います。飛ばないバットになって、ヒット1本で二塁から生還というのは難しくなったように思います。それよりも走者を三塁に進めると言う意識付けを強く意識するようになりました。

Ligaはバントに制限があるので、この状況でランナーを進めるのか、点を取るために強行するのか、という状況判断ができるようになればと思います。そういう感覚はリーグ戦だけでなく公式戦にもつながって来ると思いますね」

花園高校の山住将也監督

状況について考えるのがありがたい 花園高校

大阪府立花園高校の山住将也監督は、前任の榛田雅人監督(現部長)からチームを引き継いで4年目になる。

「去年、一昨年はぎりぎりの選手数だったのですが、今年は15人と選手のやりくりができる選手数になりました。

今年は、スタメンの決定から、試合中のサインも含めてすべて選手に任せています。

今年は走者の設定が変わりましたが、守備面で考えると、内はランナーを背負うことがすごく多いので、いろんなパターンを考えることができるのはいいですね。また昨年までは5回、6回、7回と連続で走者を設定していましたが、今年は3回、5回、7回です。毎回、状況について考えないといけないので、それも課題になってありがたいなと思っています」

一条高校の中貴文監督

常にヒリヒリした試合になる 一条高校

奈良県の奈良市立一条高校は、今季からLiga正式参加となった。中貴文監督は語る。

「10年程前、学校の教員ではあったものの、まだ野球部にはかかわっていなかったのですが、Liga Agresivaを立ち上げた阪長友仁さんの講演を聞きに行ったことがあったんです。

そのときにもLigaの話をしておられて、大変印象に残っていたんです。それ以来、野球部の顧問になったらぜひ参加させてもらいたいと思っていたんです。

でも、一条高校の顧問になって、奈良にはまだそういう動きがなかったので、阪長さんに連絡させていただいて、オープン参加でもいいからLiga大阪に参加したら、と言われて昨年参加した次第です」

一条高校対花園高校の対戦

今年から正式参加となったが、手ごたえは感じたか?

「3回、5回、7回とランナーがいた状態でイニングが始まるんですけど、試合の流れがいったん途切れて、新たな設定になるのは、ケースの勉強にもなるし、常にヒリヒリした試合になると言うか、緊張感を持ってプレーできるのが面白いなと思いました」

バットについての違和感は持たなかったのか?

「去年、うちはBBCOR仕様の金属バットではなく、ラミバット(中心部を竹材、その周囲をメイプル材を貼り付けた合成バット)を使っていました。

今年もラミバットを使用しています。金属バットを使用しないのは、高校を卒業してその先で野球をする選手がいたとしても、木製バットとはつながらないかな、と思ったからです。

今、部員数は13人です。Ligaは球数制限がある中で、投手はやはりフルで使わなければならなくなります。少し球数が増えたら3枚目の投手を使うことを考えなければいけません。それは、やはり気を使いますね」

選手の反応はどうか?

「Liga大阪は『1球速報アプリ』を導入して、マネージャーが試合のデータをオンタイムで入力しているので、選手は今、自分は何本ヒットを打ったとかがわかります。選手はそれを見て、いろいろ話しているので、そういう面でもモチベーションはあがっているのかな、と思います。

ここまで4試合戦って、全部1点差で勝ちました。ルールの特性も生かして試合ができている感じです。そういう意味では成長できていると思います」

選手全員が出場するリーグ戦

今年のLiga大阪は指導者があまり指示を出さず、イニングの合間などに直前のプレーについて指摘することが多かった。「選手自身に考えさせ、判断させる」というトレンドが一般的になったことを感じた。

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