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『適正体重を越えても理想の身体で戦いたかった』 シドニー五輪銀、永田克彦氏が語る『本物の筋肉』とは ~その3 人々の可能性を伸ばすトレーニングと新ジムの未来~

シドニー五輪レスリング銀メダリスト、永田克彦氏より身体づくりへの様々なエピソードを聞くコラム最終回。今回は競技者としてのオリンピックやプロ格闘家時代の経験、また幼少の頃に抱いていた筋肉への憧れ、さらに好きな漫画や愛読書など、内面にも踏み込んでのお話を伺った。6月1日にリニューアルオープンとなる(新型コロナの状況を踏まえて現在は休業中)トレーニングジム『MUSCLE-WIN(マッスルウィン)』への想いと共に、永田氏の熱い人間性に改めて触れることが出来た。

テレビや雑誌を通じて膨らみ続けた筋肉への憧れ

「筋肉作りも初めは、プロレスラーみたいになりたいと思った部分が大きかったです。小さい頃はテレビでプロレスをよく観ていて、『ハルクホーガンの筋肉凄いな、あれくらいデッカくなりたいな』と、憧れていました。
よく雑誌の後ろに載っていた、プロテインやトレーニング器具の通販のページなんかも見ていましたし、プロテインの宣伝広告には遠藤光男(ボディビルダー)の写真もあり、『スゲえ身体してるな』と感じていたりもしました。」

『ハルクホーガンの全盛期は2メートル140キロなんですけど』そんな知識も会話の中に織り交ぜるなど、幼少時は『筋金入り』のプロレスファンだったことが伺える。その感情は、本格的にレスリングを始める学生時以降において、競技者として生きていく上での確かな指針となった。


「大学入ったばかりの頃、自分の階級を選択したのですが、57・62・68㎏という3階級のうち、実は適正体重は62㎏だったんです。それでも、増量して理想の体型を作りたかった思いが強く、絶対に68㎏で戦うことを決めてました。『なりたいカラダ』でパワフルに戦いたいという考えは持っていました。

僕の身長(170㎝)だと、戦ってきた階級では常に低い方でしたね。同じ69㎏でも自分より高い選手が殆どだったし、70㎏台の階級でも大体、一番低かったんです。それは、僕自身の中にムキっとしたゴツイ筋肉という『理想のカラダ』があって、その身体を目指し理想の体型を作り上げたことで競技での階級も、そこ(70㎏前後)になったということです。」
どこまでも熱く、深い永田氏の「筋肉愛」。長く主戦場として戦ってきたレスリング競技での69㎏・74㎏という階級は、理想の体型を求めた末に辿り着いたとのコメントは、スポーツファンとして感慨深い限りだ。

オリンピックで成し遂げた偉業、プロ転向後も活躍

総合格闘技転向後も大舞台で活躍

「(シドニー五輪での)メダル獲得への重圧は特に無かったですね。寧ろ、五輪に出られたことが良かったです。(当時、注目も大きくなかったことで)気楽にのびのびやれたと思います。それでも、オリンピックという夢舞台を勝ち取った訳だし、悔いは残したくないという思いで、合宿やトレーニングを頑張りました。それでシドニーでの本番に臨んだのが良かったですね。」


2000年シドニーオリンピックではグレコローマン69キロ級で銀メダルに輝く。優勝候補を降してのメダル獲得の理由は、大会前から本命視されなかったことでの余裕により、本番で力を発揮できたことだという。

4年後のアテネオリンピックにも74キロ級で出場、2005年からはプロへ転向し総合格闘技の世界へと挑んだ。当時は格闘技ブーム真っ只中、時には体重差のある相手とマッチメークされることもあったプロ格闘技の世界でも臆することなく、戦いを通じて自身の理想を追い求めた。そのうえで、やはり意識が向かうのは筋肉に覆われたファイターの体型だった。

「(体重差の大きい相手との戦いは)恐怖心はありましたね。ありましたけど、それをいったら始まらないとも思いました。それと、元々、プロレスラーに憧れていたこともあって、昔は無差別の試合とかもやりたいなと思っていました。

格闘技は今でも結構、観てますよ。RIZIN(ライジン)も観てますし、UFCもたまに観ます。プロレスもすごいなって思います。盛り上がってますし。MMA(総合格闘技)もプロレスも。
(格闘家の体型は)ムキムキ系が好きですね。筋肉があっても細いのやヒョロ長いのは嫌いだったし、ゴツい体型の選手が細い選手に負けると悔しかったですね(笑)最近のMMAではヒョロ長い選手が目立ちますし、細い体型でも格闘技ではリーチがある分、打撃などで距離が取れたり有利になる部分もあるんですけど。ただやっぱり、僕は格闘技の世界でもムキムキ系に勝ってほしいですね。」

漫画の世界でも気を惹く「筋肉描写」、他に意外な作品も?

筋肉好きとしての根底にあるのは、格闘物をはじめとする漫画からも強い影響を受けたことも要因の一つ。好きな漫画として真っ先に出た答えが『プロレススーパースター列伝』。

「プロレス好きだったし、トレーニングの風景なんかもあって、よく読んでいましたね。あと、漫画としての『筋肉描写』も凄かったのもあり、好きな漫画でしたね。

『柔道部物語』も好きだったですね。あれも良かったです。(主人公の)三五十五の身体がどんどんマッチョに変わっていくんですよ。三五十五って僕と同じくらいの身長(168㎝)で、71㎏以下級なんですよ。グレコローマンレスリングでも三五十五の背負い投げで投げまくりたいなと思いましたよ。西野(三五十五のライバルの1人)なんて、161㎝で71㎏級出ているし、先輩の鷲尾も筋肉凄くて、力が強かったですよね。
他に今はあんまり読まなくなりましたけど『ドラゴンボール』も好きです。あの、逆三角形の筋肉描写も好きでした。スーパーサイヤ人の筋肉凄いな、と思っていましたね。孫悟空が好きでしたね。」

漫画のストーリーや登場人物への愛情が強烈に伝わってくるとともに、やはり『マッチョ』や『トレーニング』といったフレーズが発せられる。筋肉への強いこだわりは漫画からも深く強く、植え付けられていたようだ。

一方では、こんな意外な作品も「愛読書」だったという。
「格闘技ものだけでなく『ブラックジャック』も読んでいましたよ。両親が教員で、小さい頃は漫画には否定的だったのですが、なぜか『ブラックジャック』は家にもあり、読むことを許されていました。物語としてヒューマニズムが強く、考えさせられる内容が多かったからなのかもしれないですね。」

マッスルウィンではトレーニング、コミュニティの場としても

マッスルウィンでトレーニングする永田氏

最後に、新ジム『マッスルウィン』の未来についても語ってもらった。クオリティの高いトレーニングはもちろん、お客様同士が色々なコミュニケーションで楽しめる空間を理想としている。

「ジムの中ではトレーニングのみならず、色々な会話で盛り上がれるジムにしたいですね。今はコロナ禍で大変ですけど、いずれは飲み会などでもみんなで盛り上がりたいと思います。

昔、自分が通っていたジムで、老若男女、年配の方々や学生、様々なジャンルからのアスリートが集うジムがありました。そこでは筋肉好きの人たちならではの会話も飛び交っていました。

独特の空間であるとともに、同じ目的を持って皆が思いを共有する雰囲気は本当に楽しかったですね。マッスルウィンも、トレーニング愛好者はもちろん、女性や中高年の方々、筋トレ初心者など、皆が安心して身体を鍛えることが出来る、楽しいジムにしていけたらと思います。

(マッスルウィンのビジョンを改めて)筋肉作りでより多くの人が可能性を伸ばして行くことで、人生に勝って欲しい。そういう思いを伝えていけるジムにしたいです。」


現在はジム内のウイルス対策の施工や自動検温器などの設備の充実の他、新たなトレーニング機器の導入などを目的としたクラウドファンディングで支援も募っている。

インタビューを通じて伝えられてきた言葉の一つ一つは、トレーニングの、スポーツの魅力を改めて感じさせてくれる貴重な内容だった。そして、強くなりたい、自分の限界を越えたいという多くの人々に訪れて欲しいという新ジム『マッスルウィン』。永田氏が新たに手掛けるジムには、多くの人々がそれぞれに持つ理想を形に出来る場として足を運ぶはずだ。

筋トレを通じて心身を鍛え、人生を豊かにする。永田氏の語る『本物の筋肉作り』は、可能性を伸ばす努力を、力強く後押しする。(取材・文 佐藤文孝)

マッスルウィンの外観 再開は6月1日を予定

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