世界大会に挑むパデル日本代表、男女注目ペア

 パデルとはテニスとスカッシュの要素を持ったスペイン生まれのラケットスポーツだ。ダブルスのみでプレーする。コートはテニスコートの半分ぐらいの広さで、周囲を強化ガラスと金網によって仕切られ、壁のバウンドを活用することができる。ポイントの数え方や試合進行はテニスと同じだ。
 現在、日本での競技人口は2万5000人程度(日本パデル協会調べ)だが、スペインではサッカーに次ぐ国内第2位の競技人口を誇るメジャースポーツだ。国際パデル連盟(FIP)は2028年ロサンゼルス五輪での正式競技としての採用を目指している。2030年までに日本国内で100万人規模のスポーツに伸ばすことが日本パデル協会の目標だ。
 11月にはカタールで第15回ワールド・パデル・チャンピオンシップが開催される。以下、男女各8人の日本代表選手が、同大会へ向けて最終調整に入っている。

<女子日本代表>
吉元さやか(キャプテン)
小澤琴巳
沓名舞子
瀧田瑞月
徳本佳恵
藤原利菜
山田梨央
三砂春奈

世界大会に挑むパデル女子日本代表メンバー


<男子日本代表>
前田直也(キャプテン)
日下部俊吾
後藤優祐
五味亮将
平レオンオリリアス
富田一輝
冨中隆史
畑山成冴

世界大会に挑むパデル男子日本代表メンバー

女子は世界1ケタ順位入りが目標

 女子日本代表の主将を務める吉元さやか(37=日本女子ランキング8位)は前回の2018年パラグアイ大会にも出場しており、今回は2度目の世界大会出場になる。
「前回のときは私もパデルを初めてまだ2年目でした。パデルにはこういう戦略、こういう戦い方があると、聞いてはいたけれど経験していなかったものを、海外の選手たちと対戦することで実際に経験することができました。そこから学んだことは多く、この3年間で日本のレベルも大きく上がってきています。今回は、3年前の日本とは違うんだ、というところをアピールしたいですね」と吉元はこの3年間でつかんだ手応えを強調する。
 女子日本代表の大会での目標は1ケタ順位だ。予選リーグは4カ国ずつ4つのグループに分かれ、各リーグの上位2カ国、8カ国による決勝トーナメントに進む。「ベスト8以上を狙いたいです。個人的には、前回対戦したアルゼンチンともう一度対戦したい」と吉元は意気込む。

女子日本代表チームの主将・吉元さやか

藤原利菜・小澤琴巳組が女子日本代表を引っ張る

 今年3月の全日本選手権を制した藤原利菜(29=日本女子ランキング5位)小澤琴巳(23=同4位)組が女子日本代表を引っ張る。
 藤原は小1から大学まではテニスに打ち込み、中1のときに全国大会優勝を経験している。「10代のときにテニスで日本一になって、20代でも絶対に日本一になる!」との強い思いで今春の全日本選手権に臨み、見事優勝、20代最後の年にパデル日本一の栄冠を手にした。威力のあるショットが藤原の強みだ。テニスでは国際試合の経験を持つが、パデルで海外選手と対戦するのはこれが初めて。「国内で通用している自分のフラットバンデッハ(強いショット)が、海外選手にどこまで通用するか楽しみです。それが通用しない場合も想定しているので、そのときも冷静に対応したい」と藤原は言う。
 小澤も高校時代はテニスをプレーしていた。大学進学後にパデルと出合い、その面白さにはまってしまったという。身長168センチの高さを生かした攻守とショットの使い分けが小澤の強みだ。「世界のトップ選手の雰囲気に飲まれないようにしたい。スペイン、アルゼンチンが世界のトップなので、そのレベル感を肌で感じたい」と小澤は目を輝かせる。
 藤原はラケットスポーツ用品専門メーカーのバボラvsジャパンに勤務し、マーケティングを担当している。小澤は今年4月から都内の病院で助産師として働いている。ともに社会人として激務をこなしながらトップ選手としてプレーする。
 主将の吉元は「ぶれない強さ、突き進む強さ、迷いのない強さ、藤原・小澤組はそれを持っている。そこが2人の強みですね」と2人の強さを認める。「世界で一番パデルを楽しむペアになろう」を合言葉に世界の舞台へ挑む。

藤原(左)小澤(右)組の合言葉は「世界で一番パデルを楽しむペアになろう」

男子の目標はアジア予選突破

 前回、アジア予選で敗退した男子日本代表にとっては、本大会に進むことが目標になる。本大会開幕前に5カ国によるアジア予選が開催され、本大会に出場できるのは1カ国のみだ。男子日本代表の主将を務める前田直也(38=日本男子ランキング7位)は世界大会へ2度目の挑戦になる。「前回、日本は本大会出場を逃しました。開催国のカタールも強化を進めているらしいですが、なんとしてもアジアを勝ち抜いて、ヨーロッパや南米の強豪にもしっかり勝って、世界ランキング1ケタ入りを狙います。やるしかない!」と今回の目標を力強く話す。

男子日本代表チームの主将・前田直也

男子は日下部俊吾・平レオンオリリアス組に注目

 男子日本代表を引っ張るのは日下部俊吾(26=日本男子ランキング2位)、平レオンオリリアス(20=同1位)の2人だ。日下部・平組は今年3月の全日本選手権で初優勝した。日下部はサウスポーから放つショットと低い姿勢をキープしてのディフェンスが強みだ。平は高いフィジカル能力を生かしたパワープレーを得意としている。
 この1年半はコロナ禍のため大会の中止も相次ぎ、海外選手と対戦することができなかった。日下部は「アジア予選を勝たないと本当にレベルが高い国と戦う機会がない。アジアを勝ち抜いて絶対に本大会に進みたい」とアジア予選への意気込みを強い口調で話す。平は「アジア予選、世界大会では今まで対戦したことがない相手との対戦になる。いかに試合中に相手の弱点を探すか。たとえ実力では相手の方が上だったとしても、作戦がうまくいけば勝つこともある」と話す。
 慶大理工学部-慶大大学院卒の日下部はIT企業に勤務しアプリ開発などを手掛けるエンジニア。カナダ人の父と日本人の母との間に生まれた平は、慶大総合政策学部の3年生で、日本語、英語、スペイン語の3カ国語を操る。それぞれがお互いに対し強い信頼感を持ってプレーしているのが2人の強みだ。
「俊吾ほどの努力家に今まで会ったことがない。負けず嫌いで、悔しさをバネにハードワークできる人。コロナ禍で思うようにいかなかった間も、誰よりもストイックに自分を追い込んできた」(平)
「レオンは6歳年下だけど、冷静で考え方もプレーも大人。年上の僕の方がレオンから学ぶことが多いくらいなんです。よく『レオンは人生、ふたまわりめなんじゃないか』って言ってます(笑)」(日下部)
 主将の前田も「日下部・平組はコンビネーションが抜群。ペアとしてしっかりコミュニケーションが取れている。2人は練習のときからしっかりコミュニケーションを取り合っているんだと思う」と2人の強みを話す。

日下部俊吾(左)平レオンオリリアス(右)組は9月のFIP Riseマスター大会で準優勝した

 同大会は本来ならば昨年11月に開催される予定だったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により1年延期とされた。つらく厳しい1年間を乗り越え、それぞれの思いを胸に代表選手たちは世界の舞台へ挑む。試合結果などの情報は日本パデル協会HPにて発信される予定だ。パデル・ジャパンの戦いぶりに注目してもらいたい。

北海道札幌市出身。スポーツライター。早稲田大学在学時は陸上競技同好会に所属(短距離)。大学を卒業後、日刊スポーツ出版社に勤務し、雑誌『輝け甲子園の星』『アマチュア野球』ほか書籍などの編集を担当。2018年よりフリーランス。

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