【連載企画】四国アイランドリーグPlusの今〜徳島インディゴソックス編〜
監督・球団関係者協力の元、連載企画でお送りする「四国アイランドリーグPlusの今」
最終回は徳島インディゴソックス。
昨シーズンは2年ぶり5度目の四国アイランドリーグ総合優勝。独立リーググランドチャンピオンシップではBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスに勝利し、日本一に輝いた。
連覇を目指す今シーズンは、投手コーチとしてBCリーグ・関西独立リーグを渡り歩いてきた吉田篤史氏を監督に招聘した。
そして運営面では、18年に在籍していたOBの谷田成吾氏が球界最年少(27歳)で球団代表に就任するなど、改革を進めている。
今回はその吉田監督と谷田成吾球団代表に登場いただいた。(取材日は5月5日・6日)
5月10日まではグラウンド使用不可に
当時の状況を吉田監督に伺った。4月16日に緊急事態宣言が全国に拡大し、徳島も県内全てのグラウンドが使用不可となった。
「県内の野球ができそうな施設は全て閉まっているので、チームで集まって野球の練習をすると言うのはここ最近できていないです」
それまでは普段活動拠点としている地元企業のグラウンドで練習を行っていた。
「投手と野手は今までも時間差で練習していたので、連携プレー以外は同じグランドでは交わらない状態でした。ちょうどウエイト場もあるので、基本的には午前中投手が使って午後に入れ替わってという形です」
球団内で体調不良が出た場合は大事を取って中断したり、4月上旬には10日ほど活動を休止するなど、球団が安全管理を徹底している。
そして5月11日にグラウンドが一部使用可となり、屋外での練習が再開。6月20日にシーズンが始まってからは開幕ダッシュに成功し、勝率.778と首位を走っている。※7月13日現在
アルバイトを制限し、練習する選手も
5月10日までのグラウンドが使用できない間はできる範囲で工夫し、練習を行なっていた。吉田監督が投手を、駒居鉄平・橋本球史両コーチが野手を見ていた。
「投手に関しては毎日入れ代わりで選手が僕の自宅に来て練習しています。近くに砂浜があるので走ったり、空き地でネットスローなどをやっています。野手に関しては駒居・橋本の両名に任せていますが、選手からコーチに連絡してやっていると聞いています」
グラウンドが使えない状況で試行錯誤する中、どんな発見があったのか。吉田監督はこう続けた。
「外でも体を鍛えられることが分かったと思います。砂浜を走るにも足がきつくなる。バランスを崩さないために体の力が必要だなというのは自分たちで分かったでしょうし、新たな発見が選手にもあったと思います」
インディゴソックスの選手たちもアルバイトで生計を立てている。野球の練習を第一に考えながらやっている選手が多いという。
「基本的に練習したいということで、アルバイトを制限しながらやっている選手もいます。意欲が強いと感じますね」
目標は日本一連覇とNPB輩出の両建て
吉田監督はこれまでNPBで投手コーチを9年務めた他、BCリーグの信濃グランセローズ・関西独立リーグの和歌山ファイティングバーズと各リーグで指導者の経験を積んできた。クラブチームの監督を2年経た後、今シーズン、徳島インディゴソックスの監督に就任した。
前年日本一となったチームの印象はどうだったのか。
「昨年優勝してますし、7年連続NPB選手を輩出していますので、そこを目標にしている選手が多いです。志も能力も高い選手が多いので、指導者としてはすごく面白いチームですね」
連覇を目指すシーズン、チーム状態についてこう語った。
「昨年から残っている選手は少なくて、ほぼ新しいチームという感じです。レギュラー半数以上は入れ替わってますし、作っていく段階のチームでした。最初は時間が足りないと思いましたが、一度延びて3月28日の時点で状態は上がっていました。ただ、もう一度作り直すのでこれからですね」
目標は独立リーグ連覇だけでなく8年連続NPBへ輩出することだ。その想いを語った。
「両建てが、独立リーグの正しい姿だと考えています。チームでやる上で優勝を目指さないチームは良くないです。あとは、勝利に対してどれだけ貢献できるかが選手の価値だと思います。その価値を高めていった中で個人の能力が上がっていくので、(優勝とNPB輩出の)両建てが1番いいと思います。選手が上手くなろうと思っても勝ちを目指さなければ上手くならないので」
経営への影響は試合の開催次第
一方、運営面ではどのような状況なのか。こちらは谷田球団代表に話を伺った。
徳島県内の感染者数は7月13日現在で10人であるが、他県同様に外出や営業を自粛していた。
4月の緊急事態宣言後、球団事務所の入っているビルは閉鎖。職員は全員在宅勤務に切り替わり、地域や企業との関わりについても外回りが満足にできない状況であった。
当面は無観客開催になることで、球団の経営にどのような影響を受けているのか。今の状況を語った。
「スポンサー様は昨年を超す勢いで集まっていただいたのですが、試合ができないことになり、企業様の名前を冠する試合をどう扱うか。仮に行われなくなってしまえば収入がなくなります。来年に回すとなると、今年はマイナスにならないですけども来年落ち込むことになりますし、どう扱うかによって大きく変わります。今は予想がつかないのが現状です」
公式戦開催時以外にも影響があったという。谷田球団代表はこう続けた。
「開幕戦で1万人動員するプロジェクトを立ち上げたのですが、全て流れてしまったのと開幕に向けて制作したチラシは廃棄になってしまいました。グッズの販売イベントや決起集会も全てキャンセルになってしまったのでその売り上げがなくなってしまいました」
6月1日、四国アイランドリーグPlusは6月20日の開幕が正式決定。現在も無観客で行われているが、7月24日からついにホームゲームで観客を入れての開催が決まった。
個人及び法人会員、スポンサーは開幕までに概ね契約は締結。あとは観客を入れて試合が開催されるかに懸かっている。今は球団スタッフも応援してくれる方々を迎えるため日々準備を重ねているところだ。
地元のために今できること
徳島インディゴソックスは、球団のSNSなどオンライン施策にとても力を入れているのが特徴だ。
施策を通じて地元に少しでも力になれるよう、ある取り組みを行なっている。
「チームとして何ができるのかという点で、球団のSNSは県内で力がありますので、情報を拡散させています。例えば地元の飲食店をPRしたり、今の活動状況などをTwitterでリツートしたりブログで発信しています」
SNSによる情報拡散だけではなく、球団の持つ仕組みも活用しているという。
「球団としてECサイトの開設といった取り組みをしているので、我々の持つ仕組みを地元のために活用できるよう準備をしています。球団として徳島のためにできることを常に考えて企画を練っている段階です」
試合がない中でもファンに楽しんでもらえるよう今も企画を発信し続けている。
「手洗い啓発や家でできるようにグラブを磨く動画などを配信しました。他にもZOOMでオンライン飲み会を開催し、30人以上に集まっていただきました」
その他にも、オンラインでできることを積極的に取り組んでいる。5月1日には「次世代スポーツビジネスラボ」と手を組み、小中学生対象にオンライン野球教室の開催が始まった。吉田監督、駒居・橋本両コーチが参加し、個々に合わせた指導を行う。
「インディゴソックスが中心となって立ち上がりました。スポーツ×e-learningのようなものを生み出せれば新たなことができるのではないかということで始まりました」
ファンへのメッセージ
6月20日に開幕し、日本一連覇に向けて好調なスタート切った。取材当時、ファンに向けて以下のメッセージをいただいた。
吉田監督
「選手は一生懸命練習しています。いざ試合となったらその成果が現れると思いますし、他のチームより練習していると自負をしています。ぜひ開幕したときには、『こんな状況でもしっかりやっていたんだな』と感じてもらえると思うので、1回と言わず何回でも球場に来て下さい」
谷田球団代表
「今、大変な状況の中で頑張っている方々がたくさんいらっしゃると思います。球団としても、社会のために何ができるかというのを考えつつ開幕に向けて準備をしっかり進めていきたいです。試合ができるになった暁には、多くの方が球場に来てもらえるように今できることを徹底してやっていきます」
新型コロナウイルスの感染拡大という世界的にも未曾有の事態が襲った2020年。6月20日、四国アイランドリーグPlusにとっても特別なシーズンが幕を開けた。
満足な練習ができない中、開幕できる日を信じて工夫しながら過ごしてきた選手や首脳陣、そして球団を守るため日々この状況と戦っている運営の方々。そして応援してくれるファンが一体となり野球に向き合う姿は見逃がせない。
(取材・文/白石怜平)