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「5年ごとのジンクス」を超える。そのために下した決断と覚悟とは。アビスパ福岡・城後寿選手と北島祐二選手に聞く。

10月16日にJ1残留を決定したアビスパ福岡。このチームはかつてJ1でのプレー1年、J2でのプレー4年の周期を繰り返してきた。これは「5年ごとのジンクス」と呼ばれている。しかし、今年はこのジンクスを破り、勝点51を獲得してJ1第8位につけている(11月7日時点)。

今回スポチュニティは、この「5年ごとのジンクス」を破りJ1で戦い続けるためにクラブが下した決断と覚悟について、前々回はアビスパ福岡の川森敬史社長に、前回は長谷部茂利監督と前寛之選手の2人に話を聞いた。

第3回目となる今回はアビスパ福岡の城後寿選手と北島祐二選手の2人に、今季J1で戦うにあたり、それぞれが下した決断とアビスパ福岡への思いについて話を聞いた。(取材は10月20日に実施)

城後寿選手-「J1残留は通過点」

「城後選手は長くアビスパでプレーされているため、過去の昇格・降格時におけるチーム状況もよくご存知だと思います。城後選手から見て、今年J1残留を達成できた理由はどのような点にあると感じていますか」

「シーズン当初から、監督やクラブが今年J1で戦うための明確な目標を設定していました。その目標をチームみんなが理解して、オン・ザ・ピッチでもオフ・ザ・ピッチでも、全員がやるべきことをやっていたことが最大の特徴だと思います。でも、今季の目標は『チームのJ1残留』ではなく、『勝点50・10位以内』なので、今回のJ1残留は通過点でしかないと僕は考えています。より高い目標に向かって、選手一人一人がチームのため、そしてクラブのためにやっていくことが必要ですから」

「シーズン前から、今年がアビスパの歴史においてとてもハードで重要な1年になるだろうと、城後選手は予想されていたと思います。相当な覚悟で迎えたシーズンだったのではないかと想像しますが、今季の戦いのために城後選手が下した一番大きな決断とは、どのようなことだったのでしょうか」

「自分が果たして『決断したか』と考えると、どうなんだろうと思ってしまいますね。ただ僕はいつでも、試合に出られる時も出られない時も、またサッカー以外の場面でも、『チームのために自分に何ができるか』という視点から、やるべきことを考えるようにしています。というのも、僕自身も過去の経験からJ1で戦う厳しさはよく知っていましたし、特にシーズン当初、アビスパは降格候補のひとつに挙げられていましたからね。そんな低い評価に対して『見返してやる。絶対に結果を出してやる』という気持ちで、いつも戦っています」

写真提供 アビスパ福岡

「今年は新型コロナウイルスの影響もあり、サポーターも声が出せずに、手拍子やハリセンを叩く形で応援をすることになりました。今までとは大きく異なる応援の形でしたが、どのように感じていますか」

「実は今シーズンが始まる前には、『声も出せない状況の中で、サポーターの皆さんは一体どうするんだろう?』と僕も思っていたんです。でも、ピッチで聞く皆さんの手拍子や応援ハリセンは、本当に僕たちの支えになります。特にアビスパが苦しい試合展開の時にサポーターの応援が聞こえると、すごく大きなパワーになりますね」

「地元福岡出身の選手として、『アビスパが福岡でこういう存在のチームになってほしいなぁ』というイメージがあれば教えてくださいますか」

「今はこうした表現が良いのかどうかわかりませんが、選手とサポーターが近い距離にいるチームになってほしいし、自分もそう有りたいと思っています。サポーターと選手という区切りではなく、サポーターが接しやすいクラブになってほしいと思います」

「昨年アビスパはクラウドファンディングを実施して、2,560万円ほど資金が集まりました。このニュースを聞いた時、過去の経営危機を経験している選手の一人として、城後選手が最初に感じたこと、考えたことはどのようなものだったのでしょうか」

「昨年そちらの話を聞いて最初に思い出したのは、2014年にアビスパが経営難に陥った時のことだったんです。あの時も、たくさんのファンやサポーターの方がいち早く『アビスパを支えたい』と手を上げてくださいました。僕はその頃にはもうこのチームにいたので、『自分たちはこんなに愛されているんだな』ということを感じたんです。

そして昨年のクラウドファンデングでも、本当にたくさんの方からご支援があったと聞きました。2014年のことも含めて、改めて『自分たちって、アビスパ福岡って、本当にすごく愛されているんだな』と強く思いました」

「今回、アビスパは「『J1定着大作戦』みんなでつなぐアビスパの未来」というタイトルでクラウドファンディンを実施しています。このクラウドファンディンに参加して頂いた方や、迷っている方に、メッセージをお願いできますでしょうか」

「このコロナ禍で、本当に皆さん大変な思いをされています。クラウドファンディングへのご参加を考えられている方は、どうかご無理なさらない範囲でご支援頂ければと思います。そしてクラウドファンディングにご参加頂いた方には、クラブから本当におすすめできる返礼品をお送りいたしますし、僕ら選手はプレーを通してたくさんお返しをしたいと思っています。繰り返しになってしまいますが、どうか皆さんのご無理のない範囲でご協力を頂ければ嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします」

北島祐二選手-「応援ハリセンが一歩踏み出すパワーに」

「昨年のアビスパの戦い方と今年の戦い方を比べて、一番大きく変化したことはどのような点でしょうか」

「大きく変わったことはほとんどないと思います。昨年に引き続いて守備から攻撃への変化や相手ゴール前での崩しが、今年は強くなっているように思います」

「北島選手の目から見て、アビスパ一筋でチーム最年長としてプレーしている城後選手は、どんな存在でしょうか」

「アビスパのシンボルです。『城後選手=アビスパ』ですし『アビスパ=城後選手』だと思います。僕は小さい頃からアビスパの試合を見に来ていますが、城後選手がゴールを決めた後にアビスパのサポーターのところに走っていく場面は、やはりアビスパを象徴する瞬間ですよね」

「シーズン前から、今年がアビスパの歴史においてとてもハードで重要な1年になるだろうと、北島選手も予想されていたと思います。相当な覚悟で迎えたシーズンだったのではないかと想像しますが、今年の戦いのために北島選手がなさった一番大きな決断とは、どのようなことだったのでしょうか」

「プロ3年目の今年に『アビスパでJ1を戦う』と決めたことが、僕にとっての決断になります。というのも、実は3年目の選手って、他のチームに移籍することが多いんです。でも僕は今年アビスパで戦って、より高いレベルで結果を出そうと考えました。」

「今年は新型コロナウイルスの影響もあり、サポーターも声が出せずに、手拍子やハリセンを叩く形で応援をすることになりました。今までとは大きく異なる応援の形でしたが、どのように感じていますか」

「今シーズンが始まった当初は、『サポーターの方は声を出して応援することもできないし、きっと寂しい応援風景になるのかな』って思っていたんです。でも、あの応援ハリセンの音って、ピッチでプレーしていると、本当によく聞こえるんです。

昨年の無観客試合の時期のスタジアムは本当に静かで、自分たちの声だけが聞こえていた状況でした。でも今年の応援ハリセンは、試合中に僕ら選手の声がほとんど聞こえなくなるくらい、ものすごい強力な応援なんです。だから状況が厳しい時にあのハリセンの音を聞くと、一歩前に踏み出すパワーが湧いてくるんです。」

「小学生の頃からアビスパでプレーしてきた北島選手にとって、将来アビスパは九州においてどんなチームになっていてほしいなと考えていらっしゃいますか」

「九州には他にもいくつかJリーグのクラブがありますが、アビスパ福岡は九州で一番のクラブであるべきだし、一番になれるクラブだと思っています。『九州=アビスパ福岡』と日本中で認識されるようなチームになってほしいです。」

写真提供 アビスパ福岡

「昨年アビスパはクラウドファンディングを実施して、2,560万円ほどの資金が集まりました。以前の経営危機の時はアカデミー選手として経験したと思いますが、このニュースを聞いた時、最初に感じたこと、考えたことはどのようなものだったのでしょうか」

「本当に言葉では言い表すことができないくらい、ありがたいと思いました。そして、『必ずサッカーで結果を出して恩返しするんだ。J1に昇格して恩返しするんだ』と心に決めて、昨年はプレーしていました」

「今回、アビスパは「『J1定着大作戦』みんなでつなぐアビスパの未来」というタイトルでクラウドファンディンを実施しています。このクラウドファンディングに参加して頂いた方や、迷っている方に、メッセージをお願いできますでしょうか」

「今、アビスパが大きくそして強くなるために、皆さんのお力が必要です。僕ら選手はピッチの上で、必ず皆さんに恩返しします。どうかよろしくお願いいたします。」

共にアビスパでのキャリアが長い城後選手と北島選手。2選手はチームのため、そしてアビスパサポーターのために、日々プレーしていることがわかるインタビューとなった。

今回のクラウドファンディングは、J1で戦い続けるクラブになることを「決断」したアビスパ福岡の「覚悟」である。「5年ごとのジンクス」を完全に過去のものにして「より大きく、強く」なるために、福岡の雄の挑戦はこれからも続く。

(取材/文 對馬由佳理)

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