首都大学野球秋季リーグ戦を観に行こう! 武蔵大・筑波大・日体大・東海大・桜美林大・明学大のここまでの戦いぶりは!?
日本体育大学 勝ち点1 勝率0.6 春2位
筑波大戦 勝ち点0
⬤ 2-3x
〇 6x-5
⬤ 3-4
明学大戦 勝ち点1
〇 4-0
〇 4-1
292人の大所帯、「二刀流の矢澤」として大きな注目を集めている矢澤宏太投手・外野手(4年・藤嶺藤沢)を中心に、能力の高い選手が多いチームだ。
矢澤をはじめ、松浦佑星内野手(3年・富島)、本間巧真外野手(3年・東海大相模)、中妻翔外野手(3年・常総学院)、古滝友哉外野手(2年・健大高崎)など足の速い選手も多く、それぞれがその特性を最大限生かした攻撃ができれば、得点力はかなり上がる。
開幕カードの筑波大3連戦は、とても苦しい戦いとなった。1回戦は、延長タイブレークとなり最後はエラーで筑波大にサヨナラ勝ちを献上。2回戦は両軍合わせて18安打23四死球と荒れた試合になり、日体大がサヨナラ四球で勝利。3回戦は再び延長戦へ突入、10回表に決勝点となる四球を与え、筑波大が勝ち点1を手にした。両軍ともエラーも多く、前向きにとらえれば悪い部分をここで出し切ったともいえる3連戦だった。
そのおかげか、次の明学大1回戦は4-0で快勝。初先発の相馬綾太投手(2年・志学館)が5回3安打無失点、二番手の箱山優投手(2年・日体大柏)が4回1安打無失点と、日体大は矢澤だけではないというところを見せた。辻孟彦コーチは、相馬を先発に抜擢した理由を「オープン戦からずっと安定して持ち味の強いまっすぐを投げられていたので」と話す。相馬自身も「変化球でカウントをとって勝負球はまっすぐというのが自分のスタイル。(筑波大戦での)初登板はかなり緊張していてベンチでも『大丈夫か?』と言われていたけど、今日は自分のピッチングができました」と、笑顔を見せた。
セカンドのレギュラー中島優仁内野手(3年・佐賀商)、期待のルーキー田邊広大捕手(1年・常総学院)が故障で離脱したが、そこもカバー。古城隆利監督が「守備範囲は松浦の方が広いが、肩が強く、深いところからの送球が良い」と信頼する小吹悠人内野手(2年・山梨学院)をショートに、ショートの松浦をセカンドに置いた。レフトの守備範囲近くの深い打球を捌き送球する場面では、小吹の肩が生きた。
また、打撃のいい田邊とポジション争いをする高橋建心捕手(3年・桐光学園)が、明学大2回戦で自身もびっくりのソロ本塁打を放った。「打ったときもホームランだと思わなくて、入ったところも見えていなかったので、周りの歓声で気づきました」。高校通算1本の高橋にとって、大学でも初の本塁打となった。
打撃で目立った活躍を見せているのが、五番・相澤利俊内野手(3年・山梨学院)だ。5試合終えて打率.375、5打点を挙げている。珍しい左投げ右打ちということで個人的にも注目している選手だが、いろいろな形で点に絡んでおり目が離せない。さらに得点を挙げるためには、四番・本間の活躍が必要不可欠だ。「足」の選手というイメージが強く四番タイプではないが、古城監督は「他のチームに比べるとスケールは小さいが信頼できる中心打者です」と言い切る。まだ本調子とは言えない本間が打ち始めれば、相澤との繋がりもでき勝利に近づくだろう。
もちろん、「投打でドラフト1位の評価をもらえる選手でありたい」という矢澤のプレーも、日体大の見どころのひとつだ。
東海大学 勝ち点1 勝率0.5 春1位
明学大戦 勝ち点1
〇 3-2
〇 2-1
武蔵大戦 勝ち点0
⬤ 3-6
⬤ 4-16
リーグ優勝75回を誇る、東海大。昨秋、今春とリーグ連覇をしている。毎シーズン観ていると当たり前の光景なので麻痺してくるが、東海大の試合前のノック、ファウルの打ち方などを見て「やっぱり地力のあるチームは違うね」と言った記者の言葉に、各々が高校時代から強豪校で積み重ねてきた基礎の厚さを実感。
そんな東海大だが、ここ2年は開幕から苦しい試合が続き、終盤にかけて強さを取り戻していくという展開が多い。今季も、勝ち点こそ手に入れたが、開幕カードの明学大2連戦に苦しんだ。そして、次の武蔵大に対しては2連敗で勝ち点を落とした。特に2回戦は7回表まで0-11で負けており、危なく7回10点差以上のコールド負けを喫するところだった。
春は7勝無敗だった左腕、岩本真之介投手(2年・市和歌山)の不調は痛手だ。球威、コントロール共に、本来の岩本らしさがまだ見られない。明学大との開幕戦では3回2/3 2失点で降板。なんとか2失点で抑えられたが、7安打3四球という内容だった。明学大が岩本を研究してきた結果でもあるが、そんな相手を上回る投球ができてこそ岩本だ。
もうひとりの左腕、諸隈惟大投手(2年・東海大相模)は、明学大2回戦で143球1失点無四球完投とさすがの投球を見せたが、武蔵大2回戦では3回2/3 7失点(自責6)という結果に。東海大が本来の強さを取り戻すには、二枚看板の復活が必要不可欠だ。
リリーフ陣は、明学大1回戦で好リリーフを見せた中尾剛投手(4年・東海大菅生)、後藤丈海投手(3年・八戸学院光星)など豊富にいる。安定感のあるリリーフエースと呼べるような存在がいれば、もう少し楽な投手運用になるだろう。
攻撃面では、一番・金城飛龍外野手(3年・東海大相模)、二番・森球紀内野手(3年・東海大静岡翔洋)と経験豊富な3年生から主将の小松勇輝内野手(4年・東海大相模)、四番・吉田元登内野手(4年・東海大相模)と続いていく打線は、繋がれば大量得点も望めるが、金城が武蔵大1回戦で死球を受け肩甲骨を痛めた。2回戦は、森を一番に置いて、二番には井尻陽久監督が「期待している」と話す森下晴貴外野手(2年・東海大菅生)が入った。
森も一番という打順は多く経験しており、多彩な攻撃が可能な選手だ。参考にしているのは「同じ左バッターで二塁打も多い広島東洋カープの坂倉将吾選手」だという。ちなみに、「球紀(たまき)」という珍しい名前には「野球に限らず球技を何かやって欲しいという両親の思い」が込められているそうだ。
9月24日現在、打撃成績(打率)十傑に東海大の選手はひとりも入っていない。春、野手が1点しか取れなかった試合で完封した岩本は、7試合投げ4完投(1完封)防御率0.95という成績でチームを何度も勝利に導いた。そろそろ調子を上げてきていることが理想ではあるが、岩本が不調だとすれば、今度は野手が助ける番だ。特に、小松、吉田は4年間の集大成を見せて欲しい。