大都市圏で、徐々に特色を打ち出しつつある、さわかみ関西独立リーグ
広尾晃のBaseball Diversity:06
さわかみ関西独立リーグは、2009年にスタートした関西独立リーグ(初代)が、5年で活動を停止した翌年に、BASEBALL FIRST LEAGUEとしてスタートした。初代と同じ関西エリアをマーケットとする独立リーグだ。
タイトル写真「2020年6月の兵庫と堺の試合風景」
新体制になってリスタートを目指す
2013年12月、関西独立リーグ(初代)に所属していた紀州レンジャーズ、兵庫ブルーサンダーズ、06BULLSが揃ってリーグを脱退した。
脱退の理由は、兵庫が学校法人芦屋学園と提携したことで、リーグと日本高野連や学生野球協会など、アマチュア球界の関係が難しくなることだとされたが、当の兵庫も揃って脱退したことでもわかるように、実際にはリーグ運営を刷新して、新たな体制でリーグを再スタートしたいと言う意向があったのではないかと思われる。
関西独立リーグ(初代)はこの5年間、球団の転入・脱退が続いた。ここで心機一転して、この状況を打破したいと言うことだろう。
当時の06BULLSの経営者は、一時は球団運営を断念しようかと思ったが、地元の小学生から続けてほしいとの要望が相次ぎ、存続を決意したと語った。
兵庫も厳しい状況ではあったが、地元三田市とのむすびつきを強める中で、リーグ存続を模索した。また芦屋学園とは引き続き提携関係を結んでいた。
ただし、紀州は2014年になって新たなリーグに参加しないと表明し脱退、代わってNPO法人ベストベースボールアソシエーションが運営する姫路GoToWORLDが加入。
3球団はBASEBALL FIRST LEAGUEを設立、運営は一般社団法人ベースボール・ファースト・リーグが担い、2014年4月からリーグ戦を開始した。
しかし姫路は2015年には運営法人が手を引き、リーグ運営会社が暫定的に経営する形となったが、これも続かず、2016年限りで撤退。
代わって、2017年から和歌山県田辺市を本拠としNPO法人「ANFUTURE」が運営する和歌山ファイティングバーズが加入。3球団体制となる。
2018年12月には関西独立リーグ(二代目)と名称を変え、2020年には投資財団のさわかみ財団とネーミングライツ契約を結び、さわかみ関西独立リーグとなった。
さらに2019年には大阪府堺市を本拠とする堺シュライクスが加入。4球団体制となって現在に至っている。 リーグ創設当初は、関西独立リーグ(初代)と同様、加盟球団と脱退する球団の出入りがあったが、さわかみ財団がネーミングライツ契約をして以降、リーグ運営は比較的安定している。
運営面、選手の実力面の問題
しかしながら、観客動員は1試合平均100人以下と、他のリーグと比較しても少ない。試合開催時のスタッフの数も少ない。
さわかみ関西独立リーグは2016年に兵庫の向谷拓巳が楽天に育成3位で、同じく兵庫の山川和大が巨人に育成3位、2017年に兵庫の田中耀飛が楽天に5位で指名されたが、3人ともに一軍で成績を残すことなく退団している。
各球団は、毎年オフに巨人などが実施している非公式の入団テストに選手を送り出している。なかには最終選考まで残る選手もいるが、ドラフトにかかる選手はいないのが現状だ。
現在、さわかみ関西独立リーグに入団する選手の中には、他の独立リーグでのプレー経験を積んだ選手が多い。以前のリーグでレギュラーを獲得できなかった選手がリベンジを期して入団することが多い。端的に言えば、他の独立リーグよりハードルが低いこともあって入団する選手が多いのだ。
ただ、現在の4球団の運営体制は選手の待遇や試合の運営面でも初代の時代と比較すれば格段に進化している。
端的に言えば、選手が安心してプレーでき、ファンが安心して観戦できる環境を作ることが、リーグ、球団の安定運営につながると言うことだ。
06BULLSの永峰要一社長(現顧問)は「スポーツ保険に加盟して、選手がケガをしてもお金が出るようにするなど、球団運営を着実に行っていけば、信頼も回復できると思う」と語った。
また和歌山ファイティングバーズの当時の経営者は「現在スポンサーは限られているが、応援したいと声をかけてくださる方が徐々に出てきた。地元企業の支援をいただきながら、地元に根差した地域貢献でチームを運営しようと考えている」と語る。
2019年に兵庫は、経営陣が代わりチーム名も2021年に神戸三田ブレイバーズ、2022年から兵庫ブレイバーズとなったが、川崎大介社長は「再生途上で派手なことはできないが、できることを一つひとつやっていきたい」と語った。芦屋学園とはスポンサー契約はしているが、高校、大学生を二軍、三軍に組み入れる連携は現時点ではストップしている。
堺シュライクスは、2019年に参入したが、2020年、2021年とリーグ連覇。夏凪一仁社長は2021年からは堺市に新設された「くら寿司スタジアム」を本拠として、堅実な経営を行っている。「これからはスポンサー頼みにならない経営をしたい。子どもの運動教室も始めるなど、努力を地道に続けていって、自立していきたい」と語る。
IPBLへの加盟問題
2010年に独立リーグ連絡協議会が設立されたときは、関西独立リーグ(初代)は、四国・九州アイランドリーグ、BCリーグとともに参加していた。この組織は任意団体だったが。2014年に一般社団法人日本独立リーグ野球機構(IPBL)が設立された際は、設立されたばかりのBASEBALL FIRST LEAGUEは、参加することができなかった。
2020年以降、IPBLへの加盟申請を行っているが、今年の時点では加盟は認められていない。
IPBLの馬郡健会長は
「独立リーグの仲間が増えることは非常に頼もしく、うれしいことだ。一方で、独立リーグや球団の運営は、模索しながら少しずつ前に進んでいる状況だ。新しく加盟を目指すリーグや球団には、すでにある知見を共有しながら、より質の高い運営を目指していただきたい。そのための運営・経営のベースづくり、環境づくりが非常に重要だと考えている。さわかみ関西独立リーグのみならず、新しく加盟を目指すリーグには運営体制や運営ルール、また契約ルールなど条件を確認させていただいている。また機構の理念などに共感いただき、新しい独立リーグの形を一緒につくっていくことを確認させていただいている」
と語る。関係者の話によると、IPBL内でも「さわかみ関西独立リーグの運営体制は、かなり改善されている。加盟を認めてもよいのではないか」という意見も出たという。しかし慎重論もあって、2022年度の加盟は見送られた。
コロナ禍を超えて
2020年のコロナ禍によって、さわかみ関西独立リーグ4球団の経営も苦境に立たされた。もともと独立リーグは入場料収入は多くはなく、スポンサー収入に依拠する部分が多かった。コロナ禍で、飲食業、サービス業などのスポンサー企業の業績が悪化し、スポンサードを辞めるケースが続出したのだ。
しかし4球団とも経営努力によって現在もペナントレースを続けている。
2016年からさわかみ関西独立リーグの代表となった仲木威雄氏は、
「4球団すべてが黒字化しないと自立できない。それをサポートするのが私の仕事だ。新型コロナ禍は大変な事態だが、各球団はその前から体制変革期だったので、準備期間ができたという一面もあった。そういう部分もポジティブに考えるべきだと思う」と話す。
逆説めくが、独立リーグはそのリーグだけで「独立」していては、発展性は見込めない。日本各地に生まれた他の独立リーグと連携し、一つのカテゴリーとして他団体と交渉するためにも経営体質を強化して、IPBLへの早期の加盟が求められるところだ。
阪神、オリックスというNPB球団がある関西での独立リーグは、依然として厳しいビジネス環境にあることは間違いないところだ。これからのビジネスの展開に注目したい。