大学や地域の垣根を超えて絆をつなぐ 関西大学女子ラクロス部の挑戦 パート2 

 ラクロスというスポーツは、もともとは北米の先住民の祭事がその起源であったと言われている。選手同士が激しくぶつかり合い、 選手が手にするアルミ製のクロスと呼ばれるスティックから放たれるシュートは男子選手なら時速150㎞を超えることも珍しくない。もちろん、選手が大けがをすることも多いスポーツである。

 前回に引き続き、今回は関西大学女子ラクロス部の副主将の星本祐理乃さん(3年)と福井かがりさん(2年)に、ラクロスというスポーツの魅力や関西大学ラクロス部の将来について、お話を伺った。

ラクロスを愛する人同士が持つ一体感が魅力

お二人とも、関西大学に入学されてからラクロスを始められたと伺っています。そんなお二人にとって、ラクロスというスポーツの魅力は、どのようなところですか。

星本副主将(以下、敬称略)「このスポーツにかかわる人の絆がとても強いことが、ラクロスの魅力だと私は思います。

 例えば、関西大学のラクロス部内で先輩・後輩やOGとの絆が強いということは、ある意味で当然かもしれません。でも、その絆の強さは、私たち関西大学のラクロス部と他の大学のラクロス部との間でも、頻繁に見られることでもあるのです。

 ラクロス自体がまだマイナーなスポーツであることが理由の一つだとは思うのですが、とにかくラクロスに関わる人みんなが大学や学年の垣根を超えて、ラクロスを盛り上げようという目標のもとで、一体感を持って動いていることが、このスポーツの一番の魅力だと思います。」

福井「私も、ラクロスの魅力は『一体感』という言葉に集約されると思います。まず、大学のチームでもラクロス部のOGの方やコーチの方との『一体感』というのがあります。また、ラクロスをやっているといろいろな機会に大学外でもラクロスに関わっている方にお会いすることも多く、そのようなときに一体感の強さを感じることが多いです。」

お話を伺ったところ、様々な人が関わっているスポーツだな、という印象を受けました。ラクロスは、他の大学との交流がかなり多いスポーツなのでしょうか。

星本「はい、そうです。例えば、ラクロスには武者修行と言って、他の大学のラクロス部の練習に参加させていただく文化があるんです。この2年ほどは新型コロナウイルスの影響でこの武者修行もあまり積極的にできなかったのですが、この数ヶ月でかなり復活してきています。

 また、子どもたちにラクロスを教える活動をされている方がいて、その方の活動をお手伝いすることで、他の大学のラクロス部の方や社会人の方と知り合いになったり、ということもあります。」

福井「私もこの1年ほどの間に、他大学に武者修行に参加させていただいたり、競技関連の委員会に出席することで、他の大学のラクロス部の方と知り合うことができました。他の大学の方ともラクロスの輪でつながっているのは、とても強く感じています。」

その一方で、ラクロスは、激しく選手同士がぶつかり合うスポーツだと聞きます。チーム内でけがをされた方は、いらっしゃいますか。

星本「昨年はチーム内で4人の選手がけがのため手術をしました。実は、私達のチームの課題の一つが、フィジカルが弱いということなんです。みんなで練習する時間が限られていることもあり、練習前のウォームアップや練習後のクールダウンの時間が十分に取れないことが、こうしたけがにつながっていたと思います。

 そのため今季はウォームアップの時間を十分にとったり、筋トレを昨年より多く組み合わせることで、けが人が減るように気をつけています。」

ラクロスをしていて、今まで一番うれしかった瞬間と悔しかった瞬間を教えてください。

星本「そうですね・・。去年の関西のリーグ戦で、2部降格の危機に陥ったときに、様々なプレッシャーを受けましたし、また周りからどんなふうに見られているのかということがとても気になってしまった時期がありました。そうした状態のまま2部リーグのチームとの入れ替え戦に挑んだのですが、その時本当にたくさんの方に応援に来て頂いた中で、プレッシャーを跳ね除けてチームが一つになって勝ち切れたことが、一番うれしかった瞬間です。

 一番悔しかったのは、1回生の選手だけが出場する新人戦があるのですが、私が1回生のときに、決勝トーナメントの1回戦で敗退してしまったことです。新人戦は夏と冬に開催されるのですが、夏の試合で私たちが2位になったこともあり、冬の大会では自分たちも周りの方々も、次は優勝だと思っていました。でも実際には決勝トーナメントの1回戦で負けてしまったことが、とても悔しかったですね。でも、その時の悔しさが、自分たちの活動の原動力になっているような気がします。」

福井「私も、星本先輩が話されていた2部チームとの入れ替え戦のときに、本当にたくさんの方が応援に来ていただいているのを目の前で見て、こんなにたくさんの方に自分たちは支えられていたんだと感じたときが一番うれしかった瞬間になります。また、その応援のなかでしっかり試合に勝つことができたことが、とてもうれしかったです。

 一番悔しかったことは、私も新人戦の事になってしまうのですが、夏の新人戦で負けた同じ大学チームに、冬の大会でも負けてしまったことです。リベンジを果たせなかったことが、今までで一番悔しい瞬間です。」

朝7時から練習スタート

練習がある日の1日のスケジュールは、どのような感じでしょうか。

星本「練習は毎朝7時から11時すぎくらいまでです。でも、授業がある人は順次、練習を抜けていく形なので、部員全員が集まることができる日は、平日はほとんどありません。そして、午後は各自が自主練や筋トレをしているので、もっとみんなで集まって練習する時間を取りたいですね。」

福井「私は昨年1回生で、朝1限から授業があることが多く、平日の練習にフルに参加することがほとんどできなかったんです。そのため、他のチームメイトと比べると練習時間が少なくなりがちだったので、家に帰ってから自主練をして、みんなのレベルに追いつくようにしていました。」

練習と授業の両立で、ハードな日々を送られていると思います。それでも、お二人がラクロスを続けられる原動力は、何ですか。

星本「私の一番の原動力は、チームメイトやコーチ・監督そして保護者の方々に、自分たちが勝つことで、少しでも喜んでもらいたいという思いです。また、同時にチームメイトと目標を達成することで一緒に喜びたい、という思いもあります。

 いつか、関西大学ラクロス部のみんなで喜ぶ瞬間が来ることを想像すると、多少ハードな日々を過ごしていても、『今、自分が頑張らないといけないな』と考えることができます。」

福井「私は『関西大学ラクロス部のみんなで強くなりたい』という気持ちが、一番の原動力です。関西の大学でトップになりたいという気持ちもすごくありますし、何より部の先輩たちが本当に頑張っているのを目の前で見ているので、私もそうした先輩たちのようになりたい、という気持ちもあります。みんなで勝ちたい、みんなで強くなりたいという気持ちが、すごく大きいです。」

創部以来30年越しの夢である全国大会出場が2023年の目標。

全国大学選手権出場のため、クラウドファンディングを決意

今回、関西大学女子ラクロス部がクラウドファンディングに踏み切った経緯を、選手の立場から伺えますか。

星本「今私達は、ラクロスの全日本大学選手権へ出場することを、今季の最大目標にしています。でも、率直に言いますと、いまの私たちにとってこの目標は簡単なものではありません。

 関西大学女子ラクロス部は創部して約30年以上の歴史がありますが、残念なことに全国大会の舞台で戦ったことのある世代がまだ現れていません。また、全国大会の予選にあたる関西大会の決勝リーグに進むことも、正直なところかなり苦労しているのが現状です。そして、今私たちは関西の1部リーグで戦っているのですが、昨年は降格の危機にも見舞われました。

 こうしたことから私たち自身も、現状のままでは、簡単に全国大会で戦えるわけではないことは理解しています。でも、今までどの先輩も見ることができなかった全国大会の景色を自分たちの目で見る最初の世代になりたいと考えて、今年の目標を設定しました。

 その目標を達成するためには、今まで以上に練習場所や備品などを確保する必要がありますし、遠征に出かけていろいろな相手と試合をすることも必要になります。でも、今の状態では、そうした費用を私達だけで捻出することが難しいです。

 でも、全国大会の舞台を諦めることはしたくないですし、これから関西大学でラクロスをする将来の後輩たちに強い関西大学の経験を残してあげたいと考えて、今回クラウドファンディングに踏み切りました。」

先程、練習場所の確保というお話があったのですが、通常の練習は大学の施設を使っているのでしょうか。

星本「実は私たちのチームは大学内で同好会のカテゴリーに入っており、大学の体育会の部ではないんです。そのため、練習では大学内の施設は使うことができず、近くの公共施設にあるグラウンドなどを借りながら、毎日の練習をしています。

 他の大学のラクロス部は大学の施設を使っているところがほとんどなので、その意味では本当に苦しいのも事実です。」

未来の関西大学ラクロス部のために

10年後、関西大学女子ラクロス部は、日本でどのような存在になって欲しいですか。

星本「全日本大学選手権の舞台に当たり前に出場して、関西のラクロス界を引っ張るチームになっていて欲しいです。実は今ラクロスは、関西より関東のチームが強いという傾向があります。でも10年後には、関西大学が関西地区のラクロス界を盛り上げて、その結果として全国でも関西のラクロスチームが最も強いという状況を作って欲しいと思っています。

 また、いまだにラクロスはマイナースポーツなので、プレーする人は本当に限られていますし、このスポーツを知っている方も多くはありません。そのため、ラクロスを知ってもらうという意味でも、ボランティアなど様々な社会活動を積極的に行って、ラクロスのコミュニティをスポーツ以外にも広げることができるチームになって欲しいです。」

福井「ラクロスといえば関西大学、と全国の方に一目置かれるようなチームになって欲しいと思います。関西地区はもちろん関東や他の地域でも、『ラクロス』と聞いたら『関西大学!』と多くの人に連想してもらえるようなチームになれればよいですね。」

 ラクロスというスポーツをする人は、このスポーツを愛する多くの人と出会うことになる。そこには大学や地域の垣根はほとんどない。

 このことは、一つの大学のラクロス部の活動が活発になると、ラクロス界全体に良い影響を与えることができることを意味する。しかし、その一方で、一つの大学のラクロス部の活動が縮小されると、その影響はラクロス界全体の問題となってしまう可能性もある。

 ラクロス界の財産である「絆」を次の世代に伝えるために、そして創立当時からの夢である全日本大学選手権出場という目標を叶えるために、関西大学女子ラクロス部の奮闘が続いている。

(インタビュー・文 對馬由佳理)(写真提供 関西大学女子ラクロス部)

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