関西2部リーグ昇格へ! 大阪教育大女子ラクロス部復活の道しるべ

2020年に世界を震撼させた新型コロナウイルス感染症の影響は、私たちの生活を大きく変えた。日本においては2023年に5類感染症に位置付けられるまでさまざまな制限がかかり、中でも教育現場においては多くの活動で制限がかかった。
1991年に創部した大阪教育大女子ラクロス部もまた、その影響を受けた団体の一つだ。2020年以降新入生の勧誘活動が十分にできず、部員が激減。2022年の秋には部員が5名になり、試合はおろか練習もままならない状況に。一時は廃部の危機に陥った。
それでも学生の懸命な活動が実り、今年度は「全戦全勝2部昇格」を目標に掲げられるまで復活を遂げた。
そんなチームの歴史を紐解くと、自主性が生んだ地道な活動の成果が垣間見える。

新型コロナウイルスの影響を受け、3部に降格
部員集めがチームの目標に

ラクロスは授業で触れる機会や部活動、クラブでできる環境が少なく、高校までに経験している選手は少ない。そうした特性上、「カレッジスポーツ」と呼ばれ、競技者の多くが大学から始めている。
創部34年の大阪教育大女子ラクロス部も例に漏れず、現在所属する部員全員が大学で初めてラクロスに触れた。
小中でバレーボール、高校でハンドボールをしていた瀬野真裕子キャプテンもその一人。2022年の入学時に勧誘を受け、「何か新しいことを始めたいと思っていた中、この人とラクロスをしたら楽しいのでは?」という憧れの先輩に出会い、入部を決めた。
「今のチームではありませんが、高校まで部活動をしていなかった人がラクロス部に入っていたこともありました。いろんな背景を持っている中でもスタートラインは皆同じなので、練習をすればするほど可能性があるスポーツだと思います」と瀬野はラクロスの魅力を語る。
ただ裏を返すと触れる機会がなければ、高校の延長でバスケットボールやバレーボールといったポピュラーなスポーツに部員が流れてしまう。コロナ禍は対面での新入生の勧誘ができず、「全員に可能性がある」というラクロスの魅力を直接伝える機会が激減。
また学生リーグの規則には、他大学との合同で公式戦に出場した場合には最下部の3部に降格するというルールがあり、人数不足により合同チームを組まざるを得なかった大阪教育大は1部から一気に3部に降格してしまった。
そして瀬野が入学した2022年。コロナの影響が残る中、対面での勧誘活動が再開されたが、人数不足に歯止めがかからず同年秋には部員5人に。練習や試合をこなすことより、“部員を増やす”ことが部の最大のミッションになった。

新入生歓迎会の様子。一緒に汗を流し、ラクロスの楽しさを伝える

地道な加入活動が実り、部員が増加
環境も整い、質の高い練習ができるように

危機的状況になったこともあり、2023年以降はあの手この手で部員集めに奔走した。「本当に地道でした」と瀬野が言うチラシ配りや声がけを、入学式やオリエンテーション時だけではなく、授業間でも実施。またInstagram等のSNSでラクロスに興味がありそうな新入生にメッセージを送るなど、積極的な発信を行った。
ラクロス部のInstagramでも、チームの雰囲気やラクロスの魅力が伝わるような投稿を心がけた。
「ラクロスという競技を知ってもらわなければ何も始まりません。ラクロスを知ってもらって、体験会に参加してもらって、新歓イベントにも参加してもらって…道筋を立てて声がけをしていきました」(瀬野)
こうした地道な活動が実り、年々部員は増加。加えてラクロスをメインにしたテレビCMが流れたり、2028年のロサンゼルス・オリンピックで正式種目になったりと、ラクロスを目にすることが増えたことも追い風になった。
昨年度はマネージャーを含め部員は19名に。4回生がいなかったこともあり、今年度は1人もメンバーが抜けることなく新入生を迎えることから、30名近い部員数を見込んでいる。
「単独で大会に出場することも目標にしていましたが、人数的には大丈夫なので安心しています」と瀬野が言うように、毎年の課題だった“部員集め”を心配することなく競技に打ち込めることは大きなプラスだ。
またラクロスは10人で行うスポーツだが、実戦形式はもちろん得点に必要なゴール前の合わせの練習でも相手役を含め10人以上が必要になる。さまざまなバリエーションがあるセットの練習もこれまでは人数不足でできなかったが、余裕をもって行えるように。
「人数面での環境は整いました。今年は絶対にチームを2部に上げたいと思っています」と2年連続でキャプテンを務める瀬野は力強く意気込む。

2年連続のキャプテンでチームを引っ張る瀬野(写真左)

厳しい環境でも意思疎通を図り
2部昇格へ邁進する

大阪教育大女子ラクロス部は創部当初から学内に専門の指導者がおらず、外部からコーチを招いて練習に励んでいる。ただ日中は仕事をしているため毎回の練習に参加はできず、コーチ不在時は選手たちでメニューを作成。先述した部員集めも含め、常に自主性を持ちながら行動している。
また強化部ではないことから学校からの支援は少なく、選手たちはアルバイトをしながら活動費を捻出。用具の中には経年劣化で使用が難しいものもあり、部費に加えてOGからの寄付を頼らざるを得ない状況だ。
活動費の捻出や、教員を目指しレベルの高い授業もこなしているため、ラクロスにモチベーションが向かず退部してしまうケースも少なくなかった。
その中で瀬野を含めた幹部は、全員が同じモチベーションではないということを理解した上で積極的にコミュニケーションを図っている。
「『この先輩がいるから部を辞めたくない』と思わせるのも一つの方法だと思います。練習とそうでないときの差をつけながら、1人1人にフォーカスすることを心がけています」(瀬野)とプライベートでも時間を共にし、学年関係なく和やかな雰囲気作りを意識している。
秋のリーグ戦後から次年度のチーム始動までのオフ期間で選手が退部する年もあったが、今年度のチームは0。誰一人欠けること無く新年度を迎えられたのは、こうした細かな心がけの賜物だと言える。
だからこそ、今年は2部に昇格し歴史を変えたいと強い思いがある。
昨年は入れ替え戦に進みながら、あと一歩で敗戦。「本当に悔しかった。あの悔しさを全員が持っているし、メンバーが変わらないことを強みにして2部昇格を達成したいです」と瀬野。

2部昇格に向けた勝負の年が始まる。
(写真提供/大阪教育大女子ラクロス部)

チームワークを武器に2部昇格を目指す

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