Tomoshibi FCは「想像力」と「巻き込み力」の発展形―株式会社Paidy 橋本知周氏―

11人制サッカーの現役選手である小池純輝氏は、今年7人制サッカーのTomoshibi FCを設立した。そして、この夏にブラジルで開催された世界選手権に出場したTomoshibi FCは、初出場にもかかわらずベスト8進出という快挙を成し遂げる。
このTomoshibi FCの快進撃を支え、見守っていた人物の一人が、株式会社Paidyの副社長である橋本知周氏である。
どのような経緯で小池氏と出会い、Tomoshibi FCを支えることになったのか、その経緯を橋本氏に聞くことができた。

ビジネスマンとしての視点を持つサッカー選手
一番最初に小池純輝さんに会ったのは、いつ頃、どのような形だったか、憶えていますか。
橋本知周氏(以下、敬称略)「はい、憶えています。2019年シーズンオフに、当時東京ヴェルディでプレーしていた小池さんが、スポンサー訪問ということで、会社に来てくれたことがあり、その時初めて彼と名刺交換をしました。
通常そうした場では、選手とサッカーの話をすることが自然と多くなります。でも、小池さんは初めて会った時から『自分はサッカー選手でもあるし、同時に事業もやっているんですよ』と言って、F-Connectの話や、当時はまだ計画中だったエフコネファームの話をしてくれたんです。
その時、この人はサッカー選手としてよりも、いちビジネスマンとして世の中を見ている人なんだなということを思いました。また、世の中に対して何か良いことをしようとしていて、とても面白い人だなと感じました」
今回のTomoshibi FCプロジェクトを小池さんから聞かれた時、どんな印象を持ちましたか。
橋本「以前から小池さんと話をしていて、この人は何か新しいことをしていく人なんだろうなと思っていたので、正直に言えば、特に大きな驚きはありませんでした。とはいえ、7人制のサッカーに目をつけたことは、彼の新しいことを見つける視野の広さの表れだと思います。
また、今年7人制のチームを作ったばかりで、まだトップリーグにいるわけではないのに、チーム結成の最初の時点から『世界大会に出ます』と明言していたこと、そして、その夢を追うチームの姿を多くの人に見てもらいたいという思いも、とても小池さんらしいと感じました。
高い目標を立てて、やれることの最大限を活用して結果を出すことが、小池さんの中には普通に存在しているようです」
Tomoshibi FCは、初出場となった今回の世界大会で、ベスト8進出という結果でした。この結果について、どのように考えられていますか。
橋本「驚きました。多くの強豪チームが参加したであろう世界で、今年設立したチームがベスト8に入ったわけですから。同時に、そうしたチームの土台を作った小池さんは、本当に素晴らしい仕事をしたのだと思います。
小池さん自身は現役のサッカー選手なので、Tomoshibi FCで実際にプレーすることはほとんどないでしょう。でも、ファンを増やしたり、チームの哲学を選手に伝えたりする形でチームの土台を作ったのでしょうね。もちろん、ゲームの戦術面でもアドバイスされていたでしょうし」

「最初のきっかけ」を紐解く人
橋本さんは、小池さんとプライベートでお会いになることはありますか。
橋本「はい。あります。時々、小池さんから電話が来て、ご飯を一緒に食べに行きます」
その時、お二人の間で、どのような会話がされるのですか。
橋本「そうですね、改めて考えてみると、自分の人生における『最初のきっかけ』について、小池さんから質問されることが多いように思います。例えば、『橋本さんは、どんなきっかけで今の会社で働き始めたんですか。』ということですね。
小池さんは聞き上手なので、彼の質問に答えていくうちに自分の人生の「きっかけ」が自然と紐解かれていくような感覚になります。彼自身がさまざまな事業を始める人だからでしょうか、どんなきっかけで物事をスタートすることになったのか、ということにとても興味があるのかもしれません」
橋本さんは株式会社Paidyの副社長でいらして、いままでさまざまな事業開発をされていたと伺いました。そうした経験からのご意見を伺いたいのですが、例えば、1つのスポーツチームがファンや支える人を増やしながら、活動を拡大していくために必要なこととは、どのようなことなのでしょうか。
橋本「まずは、着実に1つ1つのことを、リアルにしていく能力が必要でしょうね。世の中には『こんな事業をしたいんです』と口では言うけど、実際にそのアイデアを事業にするために動く人って、意外と少ないんです。だから、自分で実際に動いて、アイデアを現実に変える力は必要です。
その一方で、事業って社長がすべて1人でやると、なかなかうまくいかないものなんです。どんな人が必要か、あるいはどんな力が必要か、ということを想像できる人でないと、事業を広げていくことは難しくなります。分野によってはプロの手に任せた方が、経済的にも時間的にも効率的な場合もありますし。
また、他人に対して共感を得る説明ができて、仲間を増やす能力というのも、必要になります。その点から見ると、小池さんは、この他人を巻き込む力というのがとても強い人なのかもしれませんね。そして、これからどのようなことが起こって、どのような人材が必要になるのか、ということを想像することも上手な人なのだと思います。
きっと、彼はこれからも新しいことに次々と挑戦しながら、世の中をより良くしようと行動する人なのだと思います」
今回のTomoshibi FCの世界大会ベスト8進出を喜ぶ橋本氏。しかし、彼が一番楽しみにしているのは、次に小池氏がどのような活動をしていくのか、という未来の方だろう。
Tomoshibi FCの活動が今後どのように広がっていくのか、これから橋本氏はワクワクしながら、その様子を見守っていくに違いない。
(写真提供 橋本知周氏・小池純輝氏)
(インタビュー・文 對馬由佳理)