トリニータファミリーが一つになった日 ~ 大分トリニータ、第3弾クラウドファンディング初日の渦潮

4月9日、Web上で『大分トリニータ一致団結プロジェクト』の文字が飛び交った。Twitterではハッシュタグがトレンド入り。3,000件を超えるツイートがサッカーファンのタイムラインを埋めていった。

タグになった『#大分トリニータ一致団結プロジェクト』。これは大分トリニータが開始した第3弾のクラウドファンディングの名称だ。4月9日はその開始日だった。プロジェクト初日、何が起きたのか。その1日を振り返る。

地方クラブ、逆風の中の大きな挑戦

目標金額5,000万円——。大分トリニータが打ち出した”ゴール”は非常に大きなものだった。

コロナ禍での入場者数66%減、決算での大幅な赤字見込。地方経済状況の悪化によるスポンサー減、未だ立たない収束の見通し。クラブは極めて厳しい経営環境に置かれている。しかし、使命として掲げる『J1に定着し、サッカーを通じて地域の活力になっていく』ために、クラブは強化の足を止めず、クラブハウスや選手寮への環境改善をも決めた。今回のプロジェクトは、この厳しい状況を踏まえ、チーム・クラブを支えてくれる皆様と「一致団結」しチーム・クラブを創っていこうとする取り組みだ。

しかし、その目標金額到達までの道のりは簡単ではない。大分トリニータが過去2回実施したクラウドファンディングでの累計支援金額は2,000万円弱。今回の目標はその倍を軽く超える。必然的に支援コースも高価格にならざるを得ない。選手が公式戦で使用したユニフォーム、VIP観戦席。クラブは本気を感じさせる返礼品を揃えたが、支援者にとっては気軽に踏み切れる金額ではない。くしくも、チームは3月中旬から4連敗中。プロジェクトは逆風の真っ只中にいた

想像を超える初動

しかし、懸念はいい意味で裏切られた。開始1時間強で500万円を突破し、数時間で完売となるリターンも続出。勢いは止まらず、数時間後には1,000万円の大台に早々に到達した。その初動を支えたのが、サポーターたちの拡散だ。支援の報告、友人・知人への周知、ひいては法人コースへの営業のようなコメントまで飛び交った。

(『#大分トリニータ一致団結プロジェクト』に寄せられた多くのツイート。一つひとつが拡散を後押ししていった)


この動きは、大きく広がっていった。スポンサー等地元企業の公式アカウント、指原莉乃さん、ダイノジ大谷さん・大地さんら地元にゆかりのある芸能人や地域の報道アナウンサーら著名人たちも次々にツイート。更に多くの人の目に情報が届いていく。選手達も同様だ。現在所属する選手はもちろんのこと、高松大樹氏、永芳卓磨氏ら過去トリニータに在籍した方々も声を挙げて支援を呼びかけた。他クラブのサポーターたちも自分の応援するチームに同様の取り組みを呼びかける形で拡散。結果、投稿を見た海外の方からも支援方法への問い合わせがクラブに寄せられるほどの広がりをみせた。さながら豊予を流れる速吸瀬戸の渦潮のように、大分トリニータだけでなくサッカー界、大分を取り巻く人たちでの大きなムーブメントとなっていった

応えていくクラブ、トリニータファミリー

大分トリニータもこの動きに全力で応えていく。返礼品の中で最速、90分で完売したシリアルナンバー入りニータン《特大》ぬいぐるみ。すぐにクラブには増産を求める声が多く集まった。それに応えるべく、生産を担当する取引先と緊急協議。その日のうちに、2度の増産を取り付けた。この裏側を、担当した大分トリニータ ブルースタジアム推進部の田中梨絵氏はこう語る。

「支援の動きをリアルタイムで見ていて、売り切れていく早さに驚きました。すぐに支援枠の追加を希望する声がクラブに数多く届きました。この想いを止めてはいけない。想定外でしたが、その場にいた部内メンバーですぐに緊急会議をし増産の方向を決め、生産をお願いしている取引先に連絡をしました。

急な相談ではあるものの、絶対にクオリティを落とすわけにはいかない。難しいお願いだったと思いますが、引き受けていただけました。今回の相談先は、これまでも試合イベントへの関わりやデザイン・グッズ開発など、様々な形でクラブと一緒に歩んできていただいた地元大分にある取引先でした。その関係性・信頼関係があってこそ、応えていただけたのだと思っています」

応えた企業もまた、トリニータファミリーの一員。その力で、この盛り上がりは広がっていった。

一丸となった4月9日、その後

『#大分トリニータ一致団結プロジェクト』の初日はこうして幕を閉じた。一日で集まった支援金額は2,000万円超。過去2回のクラウドファンディングでの累計額を1日で超えるそのスピードはクラブの予想を大きく超えるものだった。田中梨絵氏は初日をこう振り返った。

「不安、驚き、喜び。そんな感情で揺れ動いた一日でした。開始直前はやはり不安もありました。過去2回のクラウドファンディングを振り返り、社内体制や(クラウドファンディング運営会社である)Spportunityとの関係強化など、できる限りの準備をした、という思いがある一方で、長引くコロナ禍でみんなが厳しい状況の中、支援をお願いしていいのだろうか、支援をしていただけるのだろうか。そんな気持ちは個人的にもありました。

でもこのプロジェクトがスタートしてみると、すごい勢いで支援が集まっていき大変驚きました。『苦しい時だからこそ応援をさせてくれ』『一緒に頑張っていこう』そんなコメントに溢れていました。こんなに多くの皆様に支えて頂いているんだな、というのを深く感じました。本当に嬉しかったですし、支えてもらうに値するクラブでなくてはいけない、今回のプロジェクトも含めて期待に応えていかないといけない、というのを改めて感じています。未来の大分トリニータを皆様と一緒に創っていきたいと強く決意しました」

サポーターが挙げた声。チームや地域、サッカー自体にゆかりのある様々な立場の人が続いていく。それに応えていくクラブ。プロジェクトの名称通り、トリニータファミリーが一つとなった一日だった。

プロジェクトは今も続いている。4月20日現在、集まった金額は4,000万円を超え、1,600人以上からの支援が寄せられた。支援者の名前を記載するフラッグもどんどん埋まりつつある。

(支援者の名前で埋められていくフラッグ。試合会場でも横断幕として掲出される予定だ。(*4月10日時点のイメージ))

大分トリニータの歴史は、地域、チームを後押しするサポーター、そして多くの支援でクラブを支えてきた各スポンサー企業と創り上げた歴史である。その中では何度も大きな危機とそれを覆すドラマが生まれてきた。今回もまた、一つの歴史が生まれようとしている。

一丸となった大分は、強い。

(取材 / 文:竹之下 倫志)

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